親も見じ 姉もいとはし ふるさとに ただ檳榔樹を 見にかへりたや 「路上」
ふるさとの 尾鈴の山の かなしさよ 秋もかすみの たなびきて居り 「みなかみ」
幼くて 見しふる里の 春の野の 忘られかねて 野火は見るなり 「山桜の歌」
故郷に 帰り来たりて 先づ聞くは かの城山の 時告ぐる鐘 「黒松」
名はいまは 忘れはてたれ 顔のみの ふるさとびとぞ 夢に見え来る 「黒松」