母恋し かかる夕べの ふるさとの 桜咲くらむ 山の姿よ 「海の声」
病む母よ かはりはてたる 汝が児を 枕にちかく 見むと思ふな 「路上」
二階の時計 したの時計が たがへゆく 針の歩みを 合はせむと父 「みなかみ」
夢ならで 逢ひがたき母の おもかげの 常におなじき 瞳したまふ 「黒松」
おもほへば 父も鮎をば よく釣りき われも釣りにき その下つ瀬に 「黒松」